ちょこ見せ 書きかけの、ゾウさんの続きのお話の一部をちょこ見せです。隠してます。 続きを読むーーーーーーーーーーー 「俺はショウに、決して許されないことをしてしまった。どれだけ謝ったって済むはずがない。あんなにひどいことを、ショウに、よくも……」 思いつめた顔のマイガーは、いつもと雰囲気が違う。本気で自分を責めているのだ。 「マイガー……」 ショウは眉を下げ、苦しげに歪んだマイガーの顔を見上げる。 マイガーに謝られるようなことに、心当たりがひとつもないので、素で困っていた。 マイガーは出会った日から今日この時まで、いつもずっと優しくて、ショウの味方でいてくれた。長いつきあいになるが、そのなかでショウは、本気で嫌だと思うようなことを、マイガーからされたことが一度もない。 優しい人間同士だと、やらかした側が後々まで引きずっているのと逆に、された本人は意外と気にしていないことだってある。 たとえばカケルは、三人で仲直りをした瞬間に、ショウとマイガーがエンジョーダのスパイで裏切者だったことを、秒で手打ちにしてくれた。最近は当時の裏切りネタで、あっけらかんとイジってくるほどである。 ショウとマイガーのほうが、カケルにひどい仕打ちをしてしまったことを引きずっているから、スパイ時代の話題が出るたびに、変な半笑いと涙と手汗でビショビショになる。あの気まずさは、言葉にならない。 マイガーはなにかショウに、とてもひどいことをしたと思っている。 でもショウは、マイガーの言う「ひどいこと」を、きっとカケルがショウの裏切りを飲み下して、それ込みで改めて友達になってくれたみたいに、すでに飲み下しているのじゃないか。 「マイガー、ゆっくり話すっしょ」 「ガオ……」 「前に、ワタルに言われたでショウ。オレもカケルもマイガーも、三人ともガンコで思いこみが激しいところが、まるで家族みたいにソックリだって。オレたちみたいなヤツは、わかったつもりが早合点になったり、ひとりでなんとかしようとして、泥沼になっちまう。だから、ちゃんと話しあわなきゃダメだって、ショ」 「十歳のワタルに言われるなんて、情けない大人ガオ。でも、たしかにそうだなぁ……」 「へへっ、そうでショ~ウ。さすが、カケルのいとこは、いいコト言うでショウ」 ショウにも、長い間ひとりでずっと抱えていた悩みや不安が、悩みの種の本人からのたった一言を聞いて、秒で消えてしまったことがある。 マイガーが、どうしてショウに優しくしてくれるのか。 ショウは何年ものあいだ、どうしても聞けなかった。マイガーはみんなに優しいんだとわかって、自分はこの人の特別でもなんでもない、十把一絡げのそこらへんのモブヤカラだとわからされるのが、怖かったからだ。 ずっとショウを見てくれていたなんて、知らなかった。想像したこともなかった。マイガーがくれた答えに安心して、嬉しすぎて、もう死んでもいいかもとさえ思った。マジで死んだ。 「マイガー、そんなに思いつめるような何を、オレにしたっショ? 全然覚えがないでショウ」 「それは……」 「ねぇ、もしもオレの体が今、お米にされてても、全然いいんでショウ。マイガーが一生懸命直してくれた体でショ。大事にするでショウ。ひとつも恨みはないでショウ」 「いや、お米じゃなくて、手ごめガオ」 「しょ、手ごめ……」 「ショウを怖がらせて泣かせた、あの時の俺が目の前にいたら、ぶん殴ってやめさせたい。でも、もう遅いガオ。ショウ、今は何も言わずに、俺を叱ってくれないか……」 「マイガー」 ショウには、誰かに叱ってほしいというマイガーの気持ちが、痛いほどよくわかる。 面倒を見てくれていた、村のじーちゃんとばーちゃんがいなくなり、御羅院は御富良院に統合されて以来、姿を現わすことはなくなった。今、ショウを子ども扱いして叱ってくれる「大人」は、誰もいない。 ショウはカケルに、許されないことをした。カケルは許してくれたけれど、ショウはやっぱり、自分のことを許せないままでいる。 小さな子供をだまして都合よく利用するなんて、明日のお天道様も拝めなくなるような、本気の本当にやっちゃいけないことだ。 ショウは、これ以上の卑怯の上塗りをしたくない。嘘をついていたことをまだ怒ってはいるけれど、ショウがまた元の姿で帰ってきてくれた嬉しさのほうが大きいと、笑顔を見せてくれたカケルに、一生をかけてつぐなうしかない。 間違った道を歩いてきてしまったことを、後悔している。どこにも逃げ場なんかなくて、どうしようもなかった。だけれど、それで自分を許せるかどうかは、別の話だ。 マイガーもきっと、同じ思いを共有している。 カケルに対して。 ショウに対しても、そうなのだろうか。 「わかったっショ、マイガー。オレ、今は、マイガーを叱るでショウ。だからオレがこの先、また進む方向に迷って道を間違えた時は、マイガーがオレを叱ってくれでショウ。約束でショ」 「ショウ……」 「任せるでしょ。オレのお叱りは、ばーちゃん仕込みでしょ。じーちゃん仕込みのゲンコツもあるっショ!」 ショウは得意げな顔で、プイッとそっくりかえった。 「さあマイガー、おしりを出すでショウ!」 「えっ」 悲痛な顔をしていたマイガーが、ギョッとする。 「お、おしり?」 「当たり前でショウ、お叱りといえば、おしりペンペンでショ!」 ーーーーーーーーーーーーー 畳む #ちょこ見せ 2026.1.9(Fri) 01:37:34
書きかけの、ゾウさんの続きのお話の一部をちょこ見せです。隠してます。
ーーーーーーーーーーー
「俺はショウに、決して許されないことをしてしまった。どれだけ謝ったって済むはずがない。あんなにひどいことを、ショウに、よくも……」
思いつめた顔のマイガーは、いつもと雰囲気が違う。本気で自分を責めているのだ。
「マイガー……」
ショウは眉を下げ、苦しげに歪んだマイガーの顔を見上げる。
マイガーに謝られるようなことに、心当たりがひとつもないので、素で困っていた。
マイガーは出会った日から今日この時まで、いつもずっと優しくて、ショウの味方でいてくれた。長いつきあいになるが、そのなかでショウは、本気で嫌だと思うようなことを、マイガーからされたことが一度もない。
優しい人間同士だと、やらかした側が後々まで引きずっているのと逆に、された本人は意外と気にしていないことだってある。
たとえばカケルは、三人で仲直りをした瞬間に、ショウとマイガーがエンジョーダのスパイで裏切者だったことを、秒で手打ちにしてくれた。最近は当時の裏切りネタで、あっけらかんとイジってくるほどである。
ショウとマイガーのほうが、カケルにひどい仕打ちをしてしまったことを引きずっているから、スパイ時代の話題が出るたびに、変な半笑いと涙と手汗でビショビショになる。あの気まずさは、言葉にならない。
マイガーはなにかショウに、とてもひどいことをしたと思っている。
でもショウは、マイガーの言う「ひどいこと」を、きっとカケルがショウの裏切りを飲み下して、それ込みで改めて友達になってくれたみたいに、すでに飲み下しているのじゃないか。
「マイガー、ゆっくり話すっしょ」
「ガオ……」
「前に、ワタルに言われたでショウ。オレもカケルもマイガーも、三人ともガンコで思いこみが激しいところが、まるで家族みたいにソックリだって。オレたちみたいなヤツは、わかったつもりが早合点になったり、ひとりでなんとかしようとして、泥沼になっちまう。だから、ちゃんと話しあわなきゃダメだって、ショ」
「十歳のワタルに言われるなんて、情けない大人ガオ。でも、たしかにそうだなぁ……」
「へへっ、そうでショ~ウ。さすが、カケルのいとこは、いいコト言うでショウ」
ショウにも、長い間ひとりでずっと抱えていた悩みや不安が、悩みの種の本人からのたった一言を聞いて、秒で消えてしまったことがある。
マイガーが、どうしてショウに優しくしてくれるのか。
ショウは何年ものあいだ、どうしても聞けなかった。マイガーはみんなに優しいんだとわかって、自分はこの人の特別でもなんでもない、十把一絡げのそこらへんのモブヤカラだとわからされるのが、怖かったからだ。
ずっとショウを見てくれていたなんて、知らなかった。想像したこともなかった。マイガーがくれた答えに安心して、嬉しすぎて、もう死んでもいいかもとさえ思った。マジで死んだ。
「マイガー、そんなに思いつめるような何を、オレにしたっショ? 全然覚えがないでショウ」
「それは……」
「ねぇ、もしもオレの体が今、お米にされてても、全然いいんでショウ。マイガーが一生懸命直してくれた体でショ。大事にするでショウ。ひとつも恨みはないでショウ」
「いや、お米じゃなくて、手ごめガオ」
「しょ、手ごめ……」
「ショウを怖がらせて泣かせた、あの時の俺が目の前にいたら、ぶん殴ってやめさせたい。でも、もう遅いガオ。ショウ、今は何も言わずに、俺を叱ってくれないか……」
「マイガー」
ショウには、誰かに叱ってほしいというマイガーの気持ちが、痛いほどよくわかる。
面倒を見てくれていた、村のじーちゃんとばーちゃんがいなくなり、御羅院は御富良院に統合されて以来、姿を現わすことはなくなった。今、ショウを子ども扱いして叱ってくれる「大人」は、誰もいない。
ショウはカケルに、許されないことをした。カケルは許してくれたけれど、ショウはやっぱり、自分のことを許せないままでいる。
小さな子供をだまして都合よく利用するなんて、明日のお天道様も拝めなくなるような、本気の本当にやっちゃいけないことだ。
ショウは、これ以上の卑怯の上塗りをしたくない。嘘をついていたことをまだ怒ってはいるけれど、ショウがまた元の姿で帰ってきてくれた嬉しさのほうが大きいと、笑顔を見せてくれたカケルに、一生をかけてつぐなうしかない。
間違った道を歩いてきてしまったことを、後悔している。どこにも逃げ場なんかなくて、どうしようもなかった。だけれど、それで自分を許せるかどうかは、別の話だ。
マイガーもきっと、同じ思いを共有している。
カケルに対して。
ショウに対しても、そうなのだろうか。
「わかったっショ、マイガー。オレ、今は、マイガーを叱るでショウ。だからオレがこの先、また進む方向に迷って道を間違えた時は、マイガーがオレを叱ってくれでショウ。約束でショ」
「ショウ……」
「任せるでしょ。オレのお叱りは、ばーちゃん仕込みでしょ。じーちゃん仕込みのゲンコツもあるっショ!」
ショウは得意げな顔で、プイッとそっくりかえった。
「さあマイガー、おしりを出すでショウ!」
「えっ」
悲痛な顔をしていたマイガーが、ギョッとする。
「お、おしり?」
「当たり前でショウ、お叱りといえば、おしりペンペンでショ!」
ーーーーーーーーーーーーー
畳む
#ちょこ見せ